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国立病院機構を「事業仕分け」 −「効率化」の徹底を求められる−(全医労テレファックスニュース第91号  2010年4月26日)

内閣府に設置された行政刷新会議は4月23日、独立行政法人等の事業仕分けを実施しました。
国立病院機構もその対象となり、事業の継続も含めてさまざまな課題が議論されました。
鳩山内閣は「事業仕分け」を「公開の場において、外部の視点も入れながら、それぞれの事業ごとに要否等を議論し判定するもの」と位置づけています。
しかし、全国のあらゆる医療分野に影響を与える国立病院のあり方について、わずか2時間足らずの議論で結論を出す「事業仕分け」の手法はあまりに乱暴といえます。
しかも評価員から出された意見の多くは、病院の統廃合や病床削減そして人件費カットなど機構にさらなる「効率化・合理化」の徹底を求めるものであり、医療現場の厳しい実態からはあまりに乖離しています。
今回の事業仕分けの議論をベースにして、鳩山内閣はその具体化をすすめていくとしていますが、患者・国民の立場から国立医療の充実・強化をすすめる運動をよりいっそう強化していく必要があります。

会議の冒頭、矢崎理事長は「国立病院機構は旧療養所と旧病院でネットワークを組んで医療支援を行っている。政策医療におけるシェアも高い。
発足時に7,400億円を超える負債を引き継いだが、総収支率は99.8%から103.9%に黒字化した。
赤字病院も76から41に減少。
負債も自己収入で返済している」と「経営改善」が大きくすすんでいることを強調しました。

さらに「改革案」として「職員の意識改革と人事運用の弾力化・合理化を図るために非公務員化をぜひお願いしたい」と2011年度(平成23年度)からの非特定独立行政法人化を要望しました。
これに対し、枝野行政刷新担当大臣や評価員から次々に質問や意見が投げかけられました。
主なやり取りは以下の通りです。


矢崎理事長「統廃合は地元とよく協議して中長期的に」
<非特定独立行政法人化と公的医療機関との統合について>

評価員 「黒字化して良くなった」という前提で言われていれるが、一方で医師不足問題が深刻化している。
原因の一つには、国立病院の独法化によって独立採算が求められるようになったので、大学が医師を引き上げ始めたという話がある。
独法化したことで良くなったことと悪かったことは何か。

機 構 立地条件の悪い旧療養所での医師不足は深刻。独法化によって旧療養所と旧病院が一体となった運用が可能になった。
仙台医療センターから八雲病院に医師と看護師を派遣している。
また、築後35年以上の病棟を全体のスケールメリットを生かして療養環境の改善をすすめている。

大 臣 みなさん(機構)の方から「非公務員化する」と言われたが、決めていいですね。

機 構 (うなずく)

大 臣 機構本部・ブロック事務所に厚生労働省から来ている人は何人いますか?この人たちは非特定になるときは(本省に)帰しますね。

機 構 120人中70人いる。

大 臣 少なくとも厚生労働省から来た人は「片道切符」にして、本省に戻れなくするべき。
そうでないとガバナンス(意志決定システム)がはっきりしない。

機 構 厚労省の官僚が機構に来ることは、人数の問題はあるにしても、医療現場を知るという意味でも必要ではないか。

評価員 非公務員化は重要だが、医師の人件費が増えることになりはしないか。
収益が悪化しては身も蓋もない。
何かアイデアがあるのか。

機 構 医療の質向上、サービス向上のためには医療スタッフを増やしていかざるをえない。
全体の収益のバランスの上で考えていく。
各病院ごとに地域の実情に合わせた現実的なシュミレーションをしていく。

大 臣 統廃合によって地域の医療が崩壊しないか危惧がある。
運営費交付金がゼロになったとき、特別の疾患や過疎の医療などをやっていけるのか。
特定の交付金がわかりやすいのではないか。

機 構 統廃合に関しては、地域医療のあり方や当事者である患者さんの視点から、医療計画を作成する自治体等の地元の関係者と十分話し合って中長期的な計画ですすめていきたい。
運営費交付金については、結核など政策医療については今後も国から支援していただけるとありがたい。

評価員 人件費率と病床利用率は

民間は人件費率が50%、病床利用率は80%ぐらいだ。

機 構 人件費率は52.3%、病床利用率は82.6%。

評価員 病床利用率は90%を目指す必要がある。
例えば福島病院では病床利用率が良くなっているが、実際には重心を除けば良くない。
これは医師不足が原因。
350床の病院に医師が15名しかおらず、事実上、小児科と産婦人科しかできない。
福島病院の近くに立派な公立病院ができるというのに、統合の話がすすんでいない。
舞鶴や滋賀もいっこうに統合ができていない。

機 構 設立母体の違う病院が地域医療を育てるためにコンソーシアムを作って話し合う必要がある。
そのときに国立だからといって吸収合併という話はしない。

評価員 ぜひ滋賀や舞鶴で理事長が陣頭指揮を執ってすすめ、スピードアップを図って欲しい。
また、病床利用率が70%を下回っている病院は病床を削減し、民営化・統合を検討すべき。

機 構 滋賀では知事や市長に会っている。
滋賀病院も福島病院も医師の引き上げで苦しい状況になっているが、地域の応援態勢も整ってきている。

評価員「医療スタッフの給与を引き上げよ」
<人件費について>
評価員 国立病院機構の医師の給料は安いが、事務職員の給料は高い。事務職員のラスパイレス指数はどうなっている。

機 構 事務職員については、再編成が続いて新規採用がままならなかったので、年齢構成が高くなっている。事務職員のラスパイレス指数は97.7で国家公務員を下回っている。

評価員 医師の給料が安いのは借金があるからか。

機 構 国家公務員の時代から安い。少しずつ引き上げてきた。
だが、まだ民間や地方自治体と比べて安い。

評価員 頑張っている医者やへき地で働いている医者は
給料が高くなるような体形があるのか。

機 構 よく頑張っている医者は(賞与の)業績反映部分が大きくなるようにしている。
へき地で働いている医者については医師手当が高くなるようにしている。 

評価員 医療スタッフ不足を解消するために医師・看護師の賃金の引き上げが必要では。

機 構 引き続きドクターの賃金引き上げに努力する。人件費については、旧療養所と旧病院に較差があったが、特別な手当を廃止するなどして均衡させた。
看護師の平均年齢にも若返りしている。

評価員 医師、看護師、臨床工学技士の賃金を上げていくこと。
管理職だけを上げるのではなく。

評価員「本部・ブロックの合理化を図れ」

<本部・ブロック事務所について>
評価員 機構本部の人員と経費を説明してほしい。

機 構 本部とブロックあわせて288人で34億円。全体からすると人員は0.5%、経費は拠出金の0.4%の割合。
評価員 ブロック事務所の仕事の内容は何か。仙台のブロック事務所の管轄範囲はどこまでか。

機 構 ブロック事務所の主な役割は、病院職員の採用、医療用消耗品等の共同購入、教育研修。仙台のブロック事務所は北海道と東北を管轄している。

評価員 北海道と東北がまとめてできるのであれば、全部一括して東京でできるのではないか。
時間的にも金銭的にも合理性がない。仙台のブロックには何人が働いていているのか。

機 構 国時代は北海道と東北にそれぞれ地方医務局があった。
独法移行時に全国8あったブロックを6つに再編成した。全国一括というが医療は地域の特性がある。人員は6ブロックで150人あまり。仙台は27人。

評価員 機構は運営費交付金の上に各病院の収入の3%が上納されている。3%の基準は何か。全社連は0.5%でもっと少ない。

機 構 本部ブロックの経費は0.4%で他と変わらない。決定的に違うのは7,500億円の債務を背負っている。
病院運営をしながら借金を返していかなければならない。

評価員 現場からは本部経費が高すぎるという声をきく。
3%上納はいくらになるのか。
そして、その使い道は。

機 構 7,500億円の3%で227億円。
使途は看護学校など病院活動の支援に66億円。
本部ブロック経費が33億円、借金返済の一部に50億円、残りを資金繰りに困っている病院に短期貸し付けをしている。

 こうしたやり取りがあった後、以下のようなとりまとめコメントがされました。

国民・患者との共同を強め、国立医療の充実強化をすすめよう
 政府は、今回の事業仕分け結果を参考にしながら、来年度予算案や関連法案づくりをすすめることとしており、今後、国会で議論されることとなります。
 事業仕分けの議論の中で、一部の評価者はさらなる「効率化」をすすめるため、国立病院の統廃合や病床削減を強く主張しました。
しかし、国立病院の医療現場は、他の公的医療機関と比べても少ない医療スタッフ数や慢性化している要員不足などの厳しい実態にあります。
機構が胸を張る「経営改善」の成果は、こうした不十分な職場環境のもとでも、患者・国民のために精一杯奮闘する職員の力によるものが大きいのです。
これ以上の経営最優先の病院運営を許せば、地域の医療崩壊がさらに深刻化することは明らかです。
 国民的な視点から、税金の無駄遣いを洗い出し、是正をすることは当然のことですが、経済効率ばかりを優先させ、患者・国民サービスの低下、地域の医療破壊をすすめることは絶対に認められません。
国民が求める改革とは、国立病院を人件費削減や運営費交付金の一律削減の対象から除外し、必要な要員を確保することによって、安全・安心の医療を実現することです。

6月の統一要請行動を大きく成功させよう
 全医労は、過酷な医療現場の実態を広く明らかにし、国立医療の拡充・強化のために引き続き奮闘していきます。
すでに提起されている6月13日の週の全国統一要請行動(4月20日付指示第29号)に全支部が結集し、医療現場の生の声を地元国会議員と地元自治体等に届ける要請行動を大きく成功させましょう。 
以 上