![]() 『選択と集中の先駆け・・産婦人科医の不足が一挙に解消されたわけではないものの、それぞれの病院には産科、婦人科の症例が数多く集まり、医師にとっては経験を積み、腕を磨く期待が増えると期待される 』 「産科」「婦人科」機能を分担 大阪の2市立病院 2008.04.30 産経新聞 産婦人科医の不足が深刻化する中、2つの病院の産婦人科機能を統合し、「産科」と「婦人科」で役割分担する試みが今月からスタートした。大阪府南部に隣接して位置する泉佐野、貝塚両市の市立病院で、「泉州(せんしゅう)広域母子医療センター」として稼働している。効率的な運用で医師の負担軽減をはかり、共倒れを防ぐ苦肉の策だが、地域の産婦人科医療を守る手段として成果の行方が注目されている。 (伐栗恵子) ◇ 関西国際空港を抱える泉州南部地域(5市3町)で産婦人科が稼働しているのは、市立泉佐野病院と市立貝塚病院のみ。年間計約1500件の分娩(ぶんべん)と約1000件の手術を担ってきたのは、大阪大学から両病院に派遣された各5人の常勤医だった。 ところが、派遣元の阪大自体も産婦人科医が不足しており、平成18年秋に派遣継続は難しいとの通告を受けた両病院は、それぞれ単独での存続を断念し、機能集約することで共存する道を選択。新生児集中治療室(NICU)があり、府立泉州救命救急センターと隣接する泉佐野病院が産科を、貝塚病院が婦人科を受け持つことにした。一方、外来診療は産科、婦人科とも両病院で継続している。 つまり、貝塚病院に通っている妊婦の場合、健診は従来通り貝塚だが、分娩は泉佐野で行う。また、泉佐野の婦人科にかかっている患者の外来はそのまま泉佐野で行い、手術や入院は貝塚でとなる。 「『お産の貝塚』の看板を下ろすのは苦渋の選択だったが、高度医療の必要な分娩もできる公立病院を残すにはこれしかなかった」と貝塚の長松正章副院長。泉佐野の光田信明産婦人科部長も「崩壊してからでは遅い。いわば破綻(はたん)前処理だが、産科医療の今後のあり方として、選択肢の一つになるのでは」と話す。 センター稼働から1カ月。「トラブルもなく滑り出しは上々」と長松副院長。医師の負担軽減にもつながっているという。 例えば、両病院で1人ずつだった当直体制は、泉佐野だけの2人体制に改めた。これまでは当直以外でも、いつ急な呼び出しがあるかと医師は常に緊張感を強いられていたが、2人いれば大抵のケースに対応できるといい、安全性も高まる。「当直回数は減らなくても、ストレスは和らぐ。非常にメリットがあった」と長松副院長は効果の大きさを指摘する。 一方、妊婦にとっては費用面で明暗が分かれた。センター設立にあたり、両市は泉州南部地域の自治体に施設改修費や運営経費などの費用負担を求め、同意した泉南市など1市3町の妊婦を「市内扱い」にした。 分娩費用は今月改定され、市内は7万円のまま据え置き、市外は9万円から22万円に大幅アップ。この結果、例えば泉南市の妊婦は2万円の値下げとなる一方で、費用負担をしていない岸和田市の妊婦は13万円の値上げに。その影響で、市外扱いの妊婦が開業医に流れる傾向がみられるが、光田部長は「ハイリスクの分娩に対応できる施設として、地域の皆で支えてほしい」と理解を求める。 新システムの導入で産婦人科医の不足が一挙に解消されたわけではないものの、それぞれの病院には産科、婦人科の症例が数多く集まり、医師にとっては経験を積み、腕を磨く期待が増えると期待される。光田部長は「若手医師のやる気につながる施設にしていくことが重要」と話している。 |