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県立から町立、更に医療法人、指定管理者への経営形態の変更は 成功するであろう


改革期す、民間委託 4科を新設、土曜も診療 県内初、県立町立の三春病院/福島県
2008.02.21
朝日新聞  
 
昨年4月、県から移譲を受けるとともに、「指定管理者」に民間の医療法人を選び、経営を委託した三春町の町立三春病院。県内の自治体病院初の「公設民営」となった同病院は、サービスの向上に力を入れ、改革を進めようとしている。各地の公立病院が赤字にあえぐなか、再建のモデルケースになり得るのか。関係者の注目が集まっている。 (立松真文)


 患者さんから、待ち時間が長いという苦情が出ています。

 「待っている人がいたら、こちらから声をかけるようにしてください」

 三春病院で毎月1回開かれる「サービス向上委員会」。患者からの要望をもとに、医師や看護師、薬剤部など各部門のスタッフがサービス改善の方法を議論する。町立化後に患者サービスの一環として設置された。

 待合室に給湯ポットを置いたり、地域の幼稚園児の描いた絵を飾ったり……。これらは向上委員会で提案され、採り入れたものだ。

 「町立になってから、お医者さんもスタッフも親切になったような気がするね」。19年前から通っているという町内の男性(84)は、そう話す。

 昨年4月の町立化後に心療内科と精神科、泌尿器科、皮膚科を新設。土曜日の診療も始め、田村地区の診療所との連携を強めた。さらに病床の一部を地域の医師に開放して、診療所の医師と共同で治療にあたることができるようにもした。

 渡辺直彦病院長は「まだ足りないところはあるが、患者さんの意見をできるだけ反映させて改善していきたい」と話す。

    

 同病院は1951年、乳幼児死亡率が県内最悪だった田村郡の医療を担うために設置された。90年代に入り、診療圏が狭いことや郡山市内の病院に患者が流れるようになったことから経営が悪化した。何度か廃止論議が浮上。近年は毎年2億円前後の純損失を計上するようになり、05年の県立病院改革審議会で「県立病院としては廃止が適当」と結論づけられた。

 だが、町内に入院が可能な病院がなくなることに町民から反対の声が上がり、町は病院の引き受けを決断。県と交渉し、土地・施設などはすべて無償将来の設備更新費用として19億円の財政支援を受ける−−などの条件で譲渡が決まった。

 町は引き受けにあたって、病院の運営を民間の医療法人に委託する「指定管理者」方式の採用を決め、郡山市内の民間病院に打診。応募した二つの病院から、星総合病院を選んだ。医師も含めて同病院がスタッフを採用した。

 町も病院の役割を明確にした。「町内の開業医が地域住民のかかりつけ医の役割を果たし、町立病院はそれを補完する」「高度医療には背伸びをせず、郡山市や福島市の病院と連携を強化する」といった具合だ。町財務課は「患者の潜在的なニーズをとらえれば、経営として成り立っていくと考えた」と振り返る。

    

 病院にとって当面の課題は、赤字体質からの脱却だ。星総合病院は、系列病院と医療資材を共同購入したり、管理部門を一元化したりすることでコスト削減に取り組んだ。

 結果として07年度上半期の純損失は4千万円で、県立病院時代の半分以下の水準になった。星総合病院の星北斗副理事長は「来年度は単年度で黒字転換したい」と意気込む。町立化後にいったん落ち込んだ外来・入院患者数も、徐々に移譲前の水準に戻りつつある。

 病院の指定管理者制度は、全国的にはまだ広まっていない。「営利目的の民間病院が、どこまで地域医療に責任を持てるのか」。自治体関係者の間には、そういった懐疑的な声もある。地域によっては、赤字の病院であればあるほど民間の引き受け手がない、というジレンマもある。

 町の遠藤誠作財務課長は「町はそもそも医師集めや病院経営のノウハウなどなく、指定管理者以外の選択はなかった。軌道に乗せることで、官民連携の一つのモデルケースにしたい」と話す。


 地域に必要な医療明確に

 夕張市立総合病院の経営アドバイザーを務めた伊関友伸・城西大学准教授(行政学) 自治体が施設を設置することで公益性を担保しつつ、民間の医療法人が緊張感を持って運営を効率的に行えることが、指定管理者制度の利点だ。委託を受けた医療法人は、放漫な経営をすれば、その法人自体の経営にも影響が及ぶことになるからだ。

 組織の硬直化や経営意識の欠如といった「お役所の病理」を解消するのは容易ではない。そうした要因で経営上の問題が生じていれば「公設公営」にこだわるべきでない。自治体が直接経営するのは限界に来ており、これから導入する自治体は増えていくだろう。

 その際は公益性を担保するため、行政、議会、住民が話し合い、「自分たちの地域にどのような医療が必要か」を明確にしておくことが大事だ。そのうえで医療法人と徹底的に交渉し、最終的に、いかに志があり、良心的な管理者に委託できるかがカギになる。


 キーワード

 <公立病院の経営形態見直しと指定管理者制度> 慢性的な赤字に悩む全国の多くの公立病院では、経営再建の一環として、経営形態の見直しが議論されている。選択肢としては独立行政法人化指定管理者による「公設民営」完全な民間移譲−−などがある。

 指定管理者制度は03年の地方自治法の改正で導入され、公の施設の管理を自治体が指定する企業やNPO法人などに委託できることになった。県内の自治体病院では、昨年4月から三春病院と町立猪苗代病院で導入している。全国的には、外部の医療法人に委託する例のほか、公立病院に勤務していた職員らが新たに医療法人をつくり、委託を受ける事例もある。