3首長選、病院問題の有権者判断は 伊万里・有田町・武雄 /佐賀県 2010.04.07朝日新聞 11日に投開票される三つの首長選で、地域医療のあり方を巡り論戦が繰り広げられている。公立病院統合の是非が争点となった伊万里市と有田町。武雄市では、市民病院の民間移譲後の医療体制に、候補者が異なる主張を展開する。地域の高齢化が進む中、限られた財源でどのように医療の質を確保するのか、有権者も判断を迫られている。 (岩田正洋、小川直樹) ●伊万里市・有田町 統合が争点 「一番の争点は病院問題。中止されれば地域医療が後退する」。有田町長選が告示された6日、新顔の田代正昭氏(67)は出陣式で訴えた。一方の新顔、岩尾俊志氏(55)は「病院が移りさえすれば、バラ色の未来が開けるなんてあり得ない」と反論した。 伊万里市民病院と有田共立病院の統合計画は、両病院の老朽化に対処するため、伊万里市側が2006年12月に申し出た。基本計画では、11年12月に開業予定。市と町の境界に近い国道202号沿いの敷地約3万3500平方メートルに地下1階地上4階建ての新病棟(206床)を建設する。総事業費約64億5900万円で、伊万里市が55%、有田町が45%を負担する。 だが、計画に「待った」をかけようという有田町の住民団体が昨年12月、統合の是非を問う住民投票の条例制定を町長に直接請求したが、議会が否決。住民団体代表の岩尾氏と議長だった田代氏が、選挙戦に論戦の場を移した。 伊万里市民病院では、7年前に8人いた常勤医師が今年度は5人に減少。研修先を研修医本人で決められるようになった04年度からの新しい臨床研修制度が背景で、米田秀次事務長は「医師が技術向上できる設備がないと、医師確保は難しい」と指摘する。 基本計画では22人の医師確保を目標に掲げるが、現在、両病院の常勤医師は16人。現職の塚部芳和氏(60)が「中核病院を作らないと、医師確保ができなくなる」と訴える一方、新顔の曽場尾雅宏氏(45)は「建物でなく、医者を増やすことに力とお金をかけるべきだ」と主張する。 ●武雄市 民間移譲しこり残る 今年2月、旧武雄市民病院が社団法人「巨樹の会」(鶴崎直邦理事長)に移譲された武雄市では、地域医療のあり方に注目が集まる。 現職の樋渡啓祐氏(40)が1期目、累積赤字と医師不足の打開策として推し進めた民間移譲に、地元の武雄杵島地区医師会(古賀義行会長)などが反発。混乱は市を二分しての出直し市長選となった。 08年12月の出直し選で再選された樋渡氏の下で移譲された「新武雄病院」は、市民病院時代に7割前後に低迷していた病床利用率が満床近くまで改善。一時は5人に減った常勤医師数も10人余りを確保した。一方、外来の内科診療の無い日があることを不安視する市民の声もあるという。 樋渡氏は再選後、市と新病院、医師会を交えた協議会を設けることを表明したが実現しておらず、地域医療連携の道筋はついていない。 新病院中心のまちづくりを唱える樋渡氏に対し、民間移譲に反対した市議らに推された新顔の谷口優氏(63)は、樋渡氏の対応を「市と医師会の信頼関係を損なった」と批判。出直し選の対立のしこりを残したまま、舌戦が繰り広げられている。 ■病院・医療問題を巡る各候補の主張 【伊万里市】伊万里市民病院の統合 ・塚部氏「統合してバージョンアップし、地域医療を守る」 ・曽場尾氏「建物でなく、医者を増やすことに力とお金を掛けたい」 【有田町】有田共立病院の統合 ・田代氏「統合しないと、地域医療が後退する」 ・岩尾氏「計画は白紙撤回し、現地建て替えすべきだ」 【武雄市】市民病院民間移譲後の地域医療体制 ・谷口氏「医師会や市民らの協力による新しい医療計画の策定」 ・樋渡氏「新病院を中心とした医療観光などへの取り組み」 |