名古屋市「陽子線がん施設」PFIで開設, 民間事業者が自力で資金を調達して施設を建設し、市に譲渡。市が施設を運営し、二十年の分割払いで整備費を返済する。・・・採算について精査が必要!』
『陽子線がん施設 『年700人で収支均衡』 市議会福祉委で市が見通し 黒字は8年目から』
2008.03.14中日新聞
【愛知県】市議会の財政福祉委員会で十三日、市は二〇一一年度の開設を目指す陽子線がん治療施設の運営や資金調達方法を具体的に提示した。同時期に民間のがん治療施設が大府市に開設することもあり、各委員からは採算性や高額な医療費を不安視する声が相次いだ。(豊田雄二郎)
市の施設は、医療や福祉の総合拠点「クオリティライフ21城北」(北区平手町)内にPFI(民間資金活用による社会資本整備)で開設する。民間事業者が自力で資金を調達して施設を建設し、市に譲渡。市が施設を運営し、二十年の分割払いで整備費を返済する。
梅村麻美子さん(民主)や林孝則さん(公明)は収支の見通しをただした。市側は施設整備費や利息、建物や治療装置の保守管理費などとして年平均十三億五千万円を事業者に支払い、これと別に人件費など運営費が年平均六億五千万円かかると明らかにした。
さらに一連の治療にかかる費用を他施設と同程度の一人約二百八十万円で計算した場合、年七百人の患者で収支が均衡すると説明。開設から七年後に年七百人の利用を達成し、八年目に黒字化を見込むとしている。
各委員は、大府に同様の施設もでき、七百人の達成は困難ではとただしたが、市側は、先行する他施設でも患者数は増え続け、東海三県では二〇二〇年に年六千八百人のがん患者が出るとの推計も根拠として示し、大学との連携も強調した。
治療費については、現状では保険適用されないため、患者が全額を負担することになる。丹羽ひろしさん(名自)や岡本善博さん(自民)、わしの恵子さん(共産)は保険適用されるよう国へ働き掛けたり低所得者への助成制度を導入したりするよう求めた。さらに、海外の人も対象に加える必要性や、償還期間の二十年間に医療の技術革新もあり得るのではなどと尋ねた。市側は「検討する」などと答弁して理解を求めた。
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粒子線がん治療施設の状況(2006年度の実績)
線種 治療費 患者数
放射線医学総合研究所(千葉市) 炭素線 314万円 549人
兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市) 陽子線・炭素線 288万円 514人
国立がんセンター東病院(千葉県柏市) 陽子線 288万円 81人
若狭湾エネルギー研究センター(福井県敦賀市) 陽子線 臨床試験中 9人
筑波大陽子線医学利用研究センター(茨城県つくば市) 陽子線 臨床試験中 190人
静岡県立静岡がんセンター(静岡県駿東郡長泉町) 陽子線 240〜280万円 142人
(解説)
粒子線は良好な「線量集中性」という特徴をもっています。
X線は、身体表面に近いところで放射線が強く、病巣に届くまでに減弱し、病巣の後ろも止まらずに突き抜けていきます。このため、がん以外の正常組織にまで影響を与えることになります。
これに対して粒子線は、任意の深さにおいて線量のピークが得られる特性を持っており、身体の表面に近いところでは弱く、病巣で急激に強くなり、病巣の後ろで止まるため、正常組織への影響を最小限に抑えて、効果的な治療ができるという優れた性質があります。
また、粒子線の特徴の一つに高い「生物学的効果」があります。生物学的効果を従来のX線治療と比較すると、陽子線は1.1倍以上、炭素線は3倍前後とされており、X線治療に比べ、がん細胞を殺す能力が高いという優れた性質があります。
このような優れた性質を持つ粒子線を用いた粒子線治療は、治療に伴う痛みがなく、短期間での治療が可能であり、身体の機能と形態を損なわないなどの特徴があり、治療と社会生活の両立や、治療後の社会復帰に支障をきたしにくいなど、生活の質(QOL)に優れた治療法です。
○粒子線治療の適応疾患 現在、粒子線治療に適応している代表的ながんとして、頭頚部がん、非小細胞肺がん、肝臓がん、前立腺がん、骨・軟部肉腫などの疾患が挙げられています。
そのうち、がんが局所に限局しているなどの条件に適合したがんが治療対象とされています。
白血病や転移したがんなど全身に広がった疾患、胃がんや大腸がんのような不規則に動く臓器や管腔臓器の疾患は適応とされていません。
○国内の粒子線治療施設 現在、国内には、次の6箇所に粒子線治療施設がありますが、名古屋市を中心とした東海地域にはありません。
・放射線医学総合研究所 重粒子線医科学センター(炭素線)
・筑波大学陽子線医学利用研究センター(陽子線)・国立がんセンター東病院(陽子線)
・静岡県立静岡がんセンター(陽子線)・若狭湾エネルギー研究センター(陽子線)
・兵庫県立粒子線医療センター(陽子線、炭素線)
○粒子線治療にかかる治療費(既存施設の状況)
現在、粒子線治療は最先端の治療法であることから、照射費用は健康保険が適用されていません。そのため、照射費用は全額自己負担となり、既存の粒子線治療施設では、240万円から314万円となっています。
なお、これに付随する入院費や検査料などは、先進医療の承認を得て保険適用されています。
さらに、身体への負担が少ないため、手術の負担に耐えられない高齢者の治療が可能であり、従来のX線では治療が難しいがんに関しても効果があります。
また、病巣が重要器官に近く、手術が困難な症例にも適応できる治療法です。
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