![]() 開業医、ためいき 勤務医、ひといき 「再診料」690円に統一 2010.02.11 朝日新聞 医療機関で2回目以降の外来受診の際にかかる「再診料」が、4月から690円に統一される。 病院は90円上がり、診療所は20円下がる。 病院の勤務医の待遇改善が狙いで、診療所の開業医は危機感を募らせる。 休日や夜間に患者からの相談を受ける診療所に特別な加算を付けるなど、外来医療の報酬配分も10日の中央社会保険医療協議会(中医協=厚生労働相の諮問機関)で決まった。 「診療所の危機的な経営状況が加速してしまう」。 診療所の再診料引き下げについて、東海地方で整形外科を開業する医師は頭を抱えた。 1日に100人を超す患者が訪れ、2009年6月の診療報酬900万円のうち、再診料は18%を占めた。20円下がると収入は年間約50万円減る。 大幅引き下げなら、リハビリや事務の職員削減も考えないといけないと覚悟していた。 そうなると患者の待ち時間が延びてしまう。 今回はそうした事態を避けられそうだが、楽になるわけではない。 これまでも職員に賞与を払う7月と12月は赤字。 昨年は新たに500万円を借りた。 厚労省は、医療費の明細書を無料発行するなどの診療所には再診料に加算する方針だが、院長は「発行したり患者に中身を説明したりする時間や人手の余裕はない。現場に新たな負担と混乱を押しつけるのか」と嘆く。 北陸地方の診療所院長は、患者の病歴をよく知るかかりつけ医として、無駄な検査なしで適切に治療してきた自負がある。 「再診料引き下げで、検査を多くする開業医が増えかねない」。 その場合、患者の負担が減ると言い切れなくなる。 病院の再診料アップについて勤務医からは評価する声が上がった。 関東地方の病院に勤務する救急医は「医療費に限りがあるなかで、病院に厚くつける分、診療所が下がるのは仕方ないだろう」と話す。 病院の医師不足が進めば、医療の質に影響が出かねない。 病院で働き続けることに希望がもてず、退職して開業する医師が多いと感じる。 「開業するメリットが減れば、そうした流れの抑制にもなる」 09年10月の中医協で公表された資料では、診療所の院長の給料は平均で月額200万円を超え、一般病院の勤務医の1・7倍だった。 日本医師会は調査手法の問題点などを挙げ、「院長には経営責任があることを考慮すべきだ」などと批判。 診療所の再診料引き下げに強く反対した。 それでも、政権交代後、勤務医の過重な負担が目立つ病院の医療に重点配分しようという流れは変わらなかった。 慶応大学の池上直己(なおき)教授(医療政策学)は「今回の改定では『疲弊する病院を救済する』というメッセージが発信され、そのシンボルとして病院の再診料を上げ、診療所を下げた」と言う。 「医師の報酬はいくらが適切か、についてのコンセンサスがないため、点数の設定はコストではなく、政策で決まる」と解説。診療所の経営については「従来通りの診療では同じだけの収入を確保できなくなる。 病状が不安定な患者に受診してもらう頻度を増やすことも出てくるだろう」と指摘する。(辻外記子、武田耕太) ●新たに加算制度 地域貢献や明細書の無料発行対象 再診「5分ルール」は廃止 中医協は10日の総会で、最終局面まで決着が持ち越された外来医療に関する配分を決めた。 2年前に導入し、批判が集中した外来管理加算の「5分ルール」の要件は撤廃。 地域医療に貢献する診療所への加算などを新たに設けることになった。 診療所の再診料引き下げなどにより、外来向けに計1千億円の財源が確保された。 このうち、重点項目の小児科救急外来などに700億円を充て、残りの300億円を病院の再診料引き上げ(180億円)と外来管理加算の見直し(120億円)に回す。 外来管理加算は、再診で処置や検査の必要がない時に患者に病状を説明すれば、再診料に520円上乗せされるもの。 2年前の前回改定で、「おおむね5分間」という要件を設けたところ現場の医師らが見直しを求めていた。 4月からは、このルールを廃止する一方、患者に丁寧な説明をするという要件は残し、薬だけ受け取りにくる場合などは加算できないよう明記する。 医療崩壊が特に著しい地域医療の対策として、新たに「地域医療貢献加算」を新設する。 これは、休日や夜間でも24時間体制で患者からの相談を受ける診療所に適用する。 診療所の3割程度が対象となる見通しで、病院勤務医の負担軽減にもつなげる狙いがある。 医療費の明細書を無料発行する診療所に対する加算も設ける方針だ。 こうした新たな加算は、再診料を690円に統一したことで20円引き下がることになった診療所側の理解を得ることも背景にある。 中医協は12日、新年度の診療報酬改定の内容を厚労相に答申する。(中村靖三郎) ◆キーワード <再診料> 患者が医療機関の外来を受診すると、2回目以降、毎回算定される 。現在は診療所(ベッド数19床以下)710円、病院(同20〜199)600円。 患者が1〜3割(60〜213円)を払い、残りは公的医療保険から払われる。問診や簡単な検査への対価のほか、人件費、光熱費、施設整備費などを賄う性格のお金。 現在の点数で総額8600億円。全国の病院が保険診療で得た収入のうち0・7%、診療所では9・1% |